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このZINEは、クィアフェムである私たちにとっての「恋愛」をめぐる一冊である。
私たち――水上文、近藤銀河、中村香住、瀬川貴音の四人――はそれぞれ様々に異なっているけれど、私たちみんなに共通する点がある。それは、私たちがみんなクィアのフェムで、シスジェンダーのヘテロセクシュアルが中心の社会で流通する「恋愛」とは異なる経験をしていること、シスヘテロではない「恋愛」の話を求めていることである。
このZINEは、そんな四人が集まって作られたものである。
クィアの恋愛をめぐる様々なテーマについて、四人で大いに語り合う座談会と、各自のアイデンティティや恋愛をめぐるエッセイが収録されている。そこにあるのはすべて、なかなか他で見つけることのできなかった「私たち」の物語である。
私たちは、シスヘテロではない「恋愛」の話を求めていた。
シスヘテロであれば特段意識されもしない重要なことは、実際たくさんあるのだ。
たとえばクィアにとっての「恋愛」の経験は、セクシュアリティの気づきやアイデンティティの形成と不可分に結びついている。私たちは「恋愛」の話をすると同時に、自らのアイデンティティについても考えなければならない。
セックスや欲望の話も重要だ。私たち自身の話としても大切だけど、それだけでもない。女性の性的主体性を軽んじ、異性愛のセックスが規範化される社会で、私たちはどんな欲望を抱き、どんなセックスをしたいと望むだろう?
もちろん、クィアの恋愛には、異性愛が前提になった社会で、制度的に排除され、偏見にさらされているという特有の困難がある。出会いの困難、恋愛関係の困難、異性愛規範との格闘、コミュニティでまかり通る規範意識に対する違和感。シスヘテロの恋愛では存在しない、様々な障壁が私たちの前には立ちはだかっている。
けれども同時に、クィアだからこその喜びが、自由と創造性があることも確かである。
異性愛規範を、恋愛規範や性愛規範を相対化する視点を得られる側面があること。すでにある物語から排除されているからこそ、むしろ個々人の望む関係性、欲望を、自分たちの物語を自分たち自身で創り上げていけること。
困難も自由も、喜びも悲しみも、屈託も幸福もすべてが「私たち」のリアリティだ。
他ならない私たちのリアリティを掬い取る一冊――シスヘテロの恋愛ではなくて、言い訳程度にクィアに触れたものでもなくて、自分によく似た人々が出てくる一冊。そういう一冊が欲しかったのだ。でも見当たらない。なら、私たち自身で作ってしまえばいいのだ。そうして出来上がった一冊こそ、このZINEなのである。
水上文